炎症性腸疾患(IBD)

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炎症性腸疾患(IBD)

炎症性腸疾患(IBD)とは

炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)とは
一般的に潰瘍性大腸炎(UC:ulcerative colitis)やクローン病(CD:Crohn’s disease)のことを言い、原因不明の腸炎で、根本的治癒がなく、再燃と寛解を繰り返す難病です。

病気の原因

  • 遺伝体質
    免疫応答

  • 腸内細菌

  • 食事抗原や
    脂肪摂取量

  • ストレスや
    生活習慣

上記の様な原因が複雑に絡み合って病気を形作っていることが推定されていますが、未だ病気の原因が不明です。
全国的に患者さんが増えていて、潰瘍性大腸炎(UC)は新しい推計値で26万人、クローン病(CD)も7万人と推定されており、難病と定義されている5万人以下をすでに越しています。軽症の患者さんは難病とされず、一般的な疾患(common disease)と捉えられております。

IBD患者数推移(2014年末)

病気の症状

炎症性腸疾患の症状は、主に腹痛、下痢・血便で、病気に由来する栄養障害、成長障害ほか、腸管外合併症(関節痛、皮膚炎、眼症状、膵炎・胆管炎など)もあります。

潰瘍性大腸炎(UC)

厚生労働省の解説で「主として粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症」とされております。大腸の粘膜表面で炎症を起こし、直腸から口側奥に向かって病気が進展する、原因不明の特徴に欠ける炎症とされています。慢性的に持続する下痢血便が主症状で、トイレ通いと腹痛が頻回で日常生活に支障が出ます。治療の主体は炎症を押さえる薬で、直腸に病気が限局している人には、肛門から入れる座薬(ペンタサ座薬)や、それより口側に病気が広がる人には注腸(液状薬やフォーム泡)を使用し、口からも薬を飲んでもらいます。高血圧や糖尿病の薬と違って多めの量の薬を飲んでいただきます。薬は腸の炎症の粘膜に付着して、やけどを起こした部分に直接作用する塗り薬のように作用します。更には過剰な免疫を押さえるために免疫調節剤を使ったり、炎症を押さえるためにホルモン剤を使ったり、炎症細胞を取り除くために体外循環治療を行います。その他にも免疫細胞の作用を調節する新薬が登場しており、この領域での治療法の多様化は著しいです。
粘膜の炎症が長期に持続すると発癌する可能性もあります。

クローン病(CD)

厚生労働省の定義に拠ると「原因不明で、主として若年者にみられ、潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変からなり、消化管のどの部位にも起こりうる全層性の疾患」とされております。繰り返す難治性の口内炎から、特徴的で複雑な痔瘻を作ったり、主に小腸末端から大腸を中心としますが、食道・胃・十二指腸を含む口から肛門までどこにでも病変が生じます。粘膜表面に炎症が限定される潰瘍性大腸炎と異なり、粘膜表面から腸管筋肉や腸管の外側の腹膜まで炎症が進み、隣接する腸管に瘻孔(トンネル)を作ったり、皮膚体表面に瘻孔を作ったり、膀胱や膣など他の臓器にも病気が伸展していきます。
治療法は食事療法(低脂肪食、低残渣食、成分栄養=エレンタール治療)から開始し、炎症を押さえる内服治療(ペンタサ、プレドニン副腎皮質ホルモン=ゼンタコート)を使います。治療概念を変えるほどのインパクトを与えた治療薬 TNF-α抗体製剤(レミケード、ヒュミラ)はよく効能を示し、クローン病治療の中心となっています。最近では更に新薬の市販化、治験が進んでおり、これからも治療薬が増えていくでしょう。

病状をしっかり把握・評価して、炎症を押さえる薬を的確に確実に使用していくと、病気の活動性は低いままで、ごく普通の日常生活を送ることができます。当院としても、生活になるべく制限を加えないような穏やかな生活指導と食事指導、定期的な内視鏡検査と内服薬の継続を指導しております。

年齢

当院の患者さん年齢分布ですが、40代が一番多く、10代からご高齢の方まで幅広い患者さんに通院頂いております。

学生さん

成長期の中学生・高校生の患者さんには、学業との両立を願って様々な相談に乗っております。
また成長(伸長)を妨げないように副腎皮質ホルモンをなるべく使わないようにしております。

食事

食べ物に含まれる食物抗原が腸管の炎症を悪化させるため、成分栄養=エレンタールも多く使っております。必要に応じて栄養士の食事指導も受けて頂いております。また当院でも後援しているCCFJ日本炎症性腸疾患協会でも医療講演会が開催されております。いろいろな医療情報に出会い、自分の疾患と付き合いやすくしていただくためのお手伝いもさせて頂いております。

妊娠分娩授乳

妊娠をお考え中の女性の人でも、薬物副作用を心配しないで済むようにお薬の相談に乗っております。薬を怖がって治療薬をやめてしまって病気を悪くする方がお腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼします。不安に思うことは遠慮なくご相談ください。

大腸がんが心配

粘膜炎症が長く続くと、次第に発癌の危険性が高くなります。内視鏡検査は定期的に実施していきます。また定期的な内視鏡で、自覚症状に現れない、粘膜の炎症や、細胞の検査での炎症の程度を知り、治療法の増強や減量ができて安心の医療が実現できます。

当院で実施できる治療

経口メサラジン
(ペンタサ、リアルダ、アサコール)

炎症性腸疾患治療薬の基本です。(クローン病ではペンタサのみが適応です)
患者さんの症状やQOLに合せたお薬を選択しております。

ペンタサ - 経口メサラジン

アサコール - 経口メサラジン

リアルダ - 経口メサラジン

局所製剤
(ペンタサ座薬、ペンタサ注腸、レクタブル=ステロイドフォーム剤)

潰瘍性大腸炎では炎症の一番強い部位が肛門近く、直腸にあることが多いです。口から薬を飲んでも最も届きにくい遠い場所に炎症があります。肛門から炎症を押さえる治療は非常に重要です。病状に合わせて、ペンタサ座薬や、もっと口側深部に治療範囲を広げる目的でペンタサ注腸を使用します。(いずれも薬効メサラジン成分は1000mg含まれております)
2017年秋は副作用の少ないステロイドを主成分としたフォーム剤の「レクタブル」が発売になり、処方機会が増えております。(朝晩2回、合計6週もしくは12週間の治療となります。治療前後で内視鏡による粘膜の状態の評価観察を行っております)

ペンタサ坐薬01 - 局所製剤

ペンタサ坐薬02 - 局所製剤

レクタブル=ステロイドフォーム剤 - 局所製剤

免疫調節剤
(イムラン、アザニン、ロイケリン)

アザニン

炎症細胞の増殖を押さえる薬です。必要量の個人差が大きく、また副作用を事前に調べながら使用します。臨床効果は即効性はありませんが、確実に使うことでステロイドホルモンをやめることができるようになったり、再燃の防止、生物学的製剤の効果減弱を押さえる作用があります。処方最初は1週間2週間と頻回再来と採血検査でのチェックが必要ですが、安定期になれば年3〜4回の採血で安全性チェックができます。
現在は薬物の副作用を遺伝子で調べる採血検査が市販されました。事前に副作用の出現頻度を調べて個々人ごとに薬の調節ができるようになったため、安心感が増えました。また更に、他の遺伝子も調べて安全性を高める「臨床研究」も行っております。

当クリニックは、ステロイドホルモンに頼らない診療を目指して、
患者さんのQOLを向上させる配慮をしております。

プレドニン

即効性がありますが、慢性長期に使用すると様々な副作用(骨粗鬆症、感染症、など多数)の原因になります。また依存状態になる可能性があります。短期に効果的に使って、すぐにやめることがコツとなります。生涯に飲める合計薬剤量が目安決められております。

インテグリン阻害剤(カログラ)

カログラ

日本で創薬された世界初の血管接着分子阻害剤経口薬です。炎症を起こす細胞が、血管から腸管粘膜に移動するところを抑えます。副作用の非常に少ない内服薬で、ステロイド治療前に使います。8錠を朝昼夕3回、合計1日24錠飲みます。効果は8週間で判断して、最大26週まで飲むことが出来ます。寛解導入には使いますが、寛解維持には使いません。休薬後に再燃したときは、2ヶ月間の間隔を開けて再度飲むことが出来ます。PML脳炎を起こさないよう、使用に制限があります。

顆粒球除去療法GCAP
(血球成分除去療法)

過剰な免疫反応を持っている血球成分(顆粒球)を体外のフィルターにて除去し、腸管でなく体外のフィルターの中で炎症を擬似的に起こさせて、炎症の力のなくなったきれいな血液を体内に戻します。体外に出る血液量は約200mlで、治療終了時には全部身体に戻します。治療が進むと、過剰な炎症能力を持たない新しい顆粒球が骨髄から新たに出てきて、病気は軽快寛解に向かっていきます。薬物治療と違って副作用はありません。ただし毎回両手に太めの針を刺されるとことと、頻回の通院と90~60分のベッド安静が必要になります。
回数を重ねるごとに効果が上がるため、週に2回以上短期に治療することが効果的です。当院では臨床研究として週5回の治療を推奨しており、治療効果を示しております。
ステロイド依存症・抵抗症への対策として、ホルモン剤での副作用を避けるために、免疫抑制治療での感染症発症防止のために、当院では体外循環治療を積極的に使用しております。

治療模式図

(JIMRO:パンフレットから許可引用)

重症・劇症状態の治療は、連携大学病院に紹介しております。また当院は、臨床治験(phaseIII)に積極的取り組んでおります。

生物学的製剤
(レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、
エンタイビオ、ゼルヤンツ など)

  • レミケード

    レミケード

    8週間ごと来院にて点滴治療します。初回2時間治療から徐々に治療時間短縮を行い、1時間で維持治療ができます。
    (病状により、4週ごとの期間短縮投与や、8週間ごとの倍量投与も行っております)

    【対象疾患】
    クローン病(CD) 潰瘍性大腸炎(UC)
  • ヒュミラ

    ヒュミラ

    自宅にて2週間ごとに自己皮下注射で治療ができますので、忙しく、定期的な通院が困難な方でも、ご自分の生活のペースに合わせて投与ができます。

    【対象疾患】
    クローン病(CD) 潰瘍性大腸炎(UC)
  • シンポニー

    シンポニー

    薬物抗体ができにくいので、治療効果が持続すると期待されております。今後潰瘍性大腸炎の治療にて、活躍の場が増えると思います。4週ごとの自宅自己皮下注射治療になります。

    【対象疾患】
    潰瘍性大腸炎(UC)
  • ステラーラ

    ステラーラ01

    ステラーラ02

    • 初回治療開始時に点滴で投与します。
    • 2回目以降は維持治療で8週または12週間隔で皮下注射治療を行います。

    当院では、クローン病・潰瘍性大腸炎でのレミケード・ヒュミラの副作用症例、長期生物学的製剤使用での効果減弱に使用しております。最近は最初の生物学的製剤として使用する機会も増えてきております。薬物抗体ができにくい製造法で長期寛解維持作用が期待されております。

    【対象疾患】
    クローン病(CD) 潰瘍性大腸炎(UC)
  • エンタイビオ

    エンタイビオ

    腸管粘膜の炎症細胞がリンパ節に移動して成熟して、その炎症リンパ球が腸管に戻ってくる血管壁のところで阻害します。副作用が少ないため、高齢者や内科系合併症を多くお持ちの患者さんに安心して使えます。

    【対象疾患】
    潰瘍性大腸炎(UC) クローン病(CD)
  • ゼルヤンツ

    ゼルヤンツ

    新規分子標的薬剤のうち、最初に出た飲み薬です。
    細胞内の炎症伝達を強力に抑えます。
    朝2錠夕2錠から開始して、8週後に朝夕1錠に減量します。他の注射製剤と異なり、原理的に寛解後休薬が可能です。

    【対象疾患】
    潰瘍性大腸炎(UC)
  • ジセレカ

    ジゼレカ

    分子標的薬の2剤目の薬剤です。
    帯状疱疹の副作用率が減りました。細胞内の炎症伝達を強力に抑えます。
    1日1回1錠と服用は簡単です。

    【対象疾患】
    潰瘍性大腸炎(UC)
  • リンヴォック

    リンヴォック

    分子標的薬の3剤目の薬剤です。
    従来のJAK阻害剤に比べて、格段に炎症を抑えます。
    1日1回 45mg錠 8週間(+8週間の延長が可能)
    1日1回 15mg錠 で寛解維持を図ります。

    【対象疾患】
    潰瘍性大腸炎(UC)
           クローン病(CD)でも適応を取得しました。
  • スキリージ

    スキリージ

    インターロイキン12と23を抑えるステラーラと違ってインターロイキン23だけを強力に抑えます。
    ステラーラの効きにくくなった症例に使っています。
    初回3回点滴治療4週間隔、その後8週ごとにクリニックで自動注射ロボットを使った皮下注射になります。

    【対象疾患】
    クローン病(CD)
  • オンボー

    オンボー

    インターロイキン23だけを抑える生物学的製剤です。
    初回4週間隔3回の点滴治療、その後4週ごとにクリニックで皮下注射で維持治療します。

    【対象疾患】
    潰瘍性大腸炎(UC)
  • コレチメント

    コレチメント

    経口剤で、大腸まで届いて、大腸で溶けるステロイド製剤です。
    粘膜に直接作用して、吸収されて肝臓で代謝される薬ですので、全身的な影響・副作用は少なくなっています。
    プレドニンに比べて、軽症中等症の患者さんに使います。
    1錠9mg 1日1回8週間投与になります。

    【対象疾患】
    潰瘍性大腸炎(UC)

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